偉大な David (2)

D.Hendry の名を世にしらしめたのは、いわゆる LSE アプローチのなかで、「長期均衡式」と「短期調整式」を区別することの重要性を指摘したこと(だと思う)。これは、Granger(2003年ノーベル記念経済学賞)が共和分の概念を提唱して representation theorem を発表するより前のことだから、アイデアの源流を評価するという意味では、昨年の経済学賞は Hendry がとってもおかしくはなかったはず(Grangerは同僚の Engle に助けてもらったんだし、Engle も ARCH モデルだけでは賞に届かないだろうし、Engle-Granger の推計法をのちに一般化したのは別人の Johansen なんだし)。Granger は他にも数理統計への貢献があるという人もいるが、実は、「Granger-Causality」という(あまり役にたたない)因果性検定手法のおかげでとにかく誰にでも名前が知られていたからではないかと思ったりもする。そのせいもあって?質問の内容がこと「非定常変数の扱い」にかかわると、Hendry の口調はとたんに激しくなる。「なんの関係もない、なんの心配もない、かーんたんに証明できる、われわれはずっと以前からそんなことは知っているんだ」。そのとき、オックスフォードからの参加者はみな一様に、したり顔で笑うのでした。かっこいいね。

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このページは、eiichiが2004年12月24日 00:50に書いたブログ記事です。

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