我が母校が「全日制単位制高校」に移行するというニュースが昨日報じられた。「単位制高校」とは何かを調べてみようということで、大阪府教委の 『高校整備プロジェクト報告書』 をながめてみた。門外漢だけれど、思うところのたわごとを以下に記す(身近な社会問題のひとつとして興味を持ったからである)。
報告書によると、「単位制」のメリットは生徒各々の個性や興味に応じた多様な科目編成と柔軟な履修体制、これはまさに SMAP『世界にひとつだけの花』の世界ではないか^^。しかし今回の場合、どうやら、こうした SMAP 的変身は「建前」で、関係者の「本音」は別のところにあるようだ。端的にいうと、「単位制」のほんとうのメリットは、府下全域から生徒を募集できることと、それに加えて、能力別・進度別のクラス編成ができることだろう。毎日新聞が報じているように「進学校色が強まる」ことを狙っているのは間違いない。わが母校は昭和48年度の学区変更によって、元旧制中学のなかでもおそらく最も悲惨な凋落をみた。特に、今年の学区再編成(昭和48年以前の旧学区への復帰)によって、驚くべき低迷ぶりがあらためて浮き彫りになったから、関係者の多くは「少しでも上へ」と切望していることだろう。つまり、この「本音」の改革の成功を、多くの関係者は願っているはずである。
成功のカギは、当然ながら、できるだけ優秀な生徒を府下全域から集めてくること、それから、「世界にひとつだけの花」的な建前を維持しながら、いかに効率的に能力別クラスを編成できるかということだろう。しかしこれは、素人眼からみても明らかに、一公立高校の努力のみでは不可能なこと。府教委の緻密な行動計画と全面的な支援が必要となる。前段階の準備だけでも、府下全域の中学校(進路担当者)への説得・根回し、教員スタッフの増員と多様化などが必須だろうから。しかるに、府教組は早々に労働強化に対する(抽象的な)反対声明をだしたようだし、府教委の『報告書』(上掲)を見るかぎり、「本音」の部分に関する具体的なプランは当該高校に一任されているような印象を受ける。もとより、上述の「建前」と「本音」の齟齬についてさえ、ちゃんとしたコンセンサスはあるのだろうか。そもそも、昭和48年の学区変更の目的は、受験競争の激化を緩和すること、つまり府立高校を進学校ではなくしてしまうことにあった。そんな府教委と府教組が180度まったく逆の「進学校化」計画に、果たして、組織をあげて本腰で取り組むのだろうか。
私は、おおかたの期待に反して、わが母校は、けっきょく「建前」どおりに「大阪にひとつだけの花」として SMAP 的変身を模索していくという可能性も少なくはないように思う。「単位制」への移行により生徒の自由な選択の幅は広がるが、「易きに流れる」傾向は日本中どこの大学でも観察されることである。志の高い優秀な生徒が一定数以上確保できなければ、能力別編成どころか、普通科では全員必修とされる科目の履修登録者も激減するといった可能性はないだろうか。なんだか、上掲『報告書』は、こんな可能性も見越して、あえて「本音」の部分をあいまいなままにしているのではないかという風にも思えてくる。