↓のような公立の衰退と私立の台頭は、東京でも(大阪より早い時期から)生じていたようで、伊藤・西村『教育改革の経済学』に、都立学校群制度の導入は「諸悪の根源」だったという記述を発見^^(第五章 pp72-74)。興味深いのは、当時の都教委・都教組の「意図に反して」改革は失敗したとされているところ。私はそうは思わない。公立高校を低位平準化させるのは最初からの目標でそれはみごとに成功したのだと思う。この「改革」の成功が、誰に最大の恩恵(というか唯一の恩恵)をもたらしたかを考えてみれば明らかではないだろうかとも思うのだけれど。。
まぁそれはともかくとして、ところでそもそも、大学へ進学することのメリットとはなんだろう。もちろん、第一義的には、教養を高め専門知識を深めることができるという点。実利には直結しないといわれるかもしれないが、これはけっして幻想ではない。むしろ、大学進学率が高まった今こそ、この点は強調されるべき。なぜといって、出発点の基礎学力が低いほど、教育の効果は高まるはずだから^^。しかしまぁこれもともかくとして、「実利」の観点からメリットを考えると、日本の大学教育の「収益率」は他国に比べて低いという統計がある。
大学教育の収益率については、国民生活白書などにも解説があるが、みらい wiki の「収益率」に関する記事が、出色の明快な解説。これによると、日本の場合、大卒と高卒の生涯所得の差は平均で7000万円弱。これは十分に大きな差だと思うが、しかしカネのことだけを言うならば、高卒ですぐに就職して4年間働くならば、大学へ進学した場合に比べて、平均で1600万円ほど「浮く」(大学の費用400万円+所得1200万円)。この1600万円を何かに投資したとする。その投資収益率が6%以上ならば、上の7000万円の生涯所得差は埋まってしまう。つまり、大学教育の収益率は 6%。たとえば預金利子率が 6%以上なら、確実に大卒・高卒の生涯所得差は逆転して、高卒のほうがオカネを稼げることになる。まぁゼロ金利時代に6%の実質?収益率は考えにくいが、ともかく、この6%という日本の数字は、他国に比較すると、かなり低い。欧米では 15%以上だそうだ。
この彼我の収益率の差は何に起因するのだろうか。これを探ることは、日本の大学教育の収益率が将来下がっていくのか、あるいは上がっていくのかを予測する材料になる。もちろんここでもまたまた「格差」を考慮しなければならないけれど(大学間格差)。