バブルへGo!

昨夜、TVをつけると、邦画「バブルへGo!」が放映されていた。レコードを聴いていたので、最初はTVの音声を消して画像だけを表示させていたんだけど、マハラジャのワンレン・ボディコン、万札を振りかざしてタクシーに群がる若者たちが登場したあたりから、本気で見入ってしまった(懐かしいという感覚ではなくて、むしろ、こんな世界がほんとうに存在していたのかという興味がしんしんで)。 1990年に大蔵省が実施した「不動産融資総量規制」(文字通り、土地投機へのおカネの流れを止めようとしたもの)。これがバブルを終わらせ大量の不良債権を生じさせて日本経済を「破綻」させた(という風に、この映画では解釈されている)。そこで、精鋭部隊(薬師丸ひろ子+広末涼子)がタイムマシンに乗って1990年の日本に行き、この政策をストップさせるために悪戦苦闘する。任務は成功裏に遂行され、精鋭部隊の二人が再びタイムマシンで2007年の日本に戻ってくると・・・「破綻」をまぬかれてさらに豊かになった立派な日本経済の姿があった、めでたしめでたしのハッピーエンド。

この映画の基調にあるのは、(伊武雅人演じる)無能怠慢傲慢狡猾にして公共心のかけらもない腐敗官僚への怒り。こいつらがもうちょっとマトモな連中なら、日本はここまでヒドい状態にはならなかったというわけ。映画の最後のほうで、阿部寛演じる正義の大蔵官僚はいみじくもこう語る --「バブルはいずれは崩壊する」。「バブル」は早晩(もっとマイルドなかたちで)終わっていたのに、拙速なバブル潰し政策が日本経済を未曾有の大不況に導いたというわけだ。これ自体は、まぐれあたりにせよ、ひとつのポイントをついている(もちろん、正しいかどうかの検証は別問題)。しかし、「バブル」に関する(監督・原作者の)知識は粗雑で、的外れである(アイドル映画なんだからあたりまえ?)。細かくあげつらうとキリがないので、一点だけ指摘する。

以下は、たまたま先週の月曜日に「経済学特講」でやったばかりの「バブル」ネタ(の最初の部分、講義資料はこちら)。経済事象には、background(背景)、trigger(直接の契機)、catalyst(加速要因)、terminator(終焉の契機)がある。「バブル」の場合、背景としては (1) 大企業の銀行離れ、(2) 小さな政府・規制緩和の潮流など。トリガーは、(3) プラザ合意直後の日銀の超金融緩和政策。加速要因としては、(4) ブラックマンデー、(5) 日本人の土地信仰など。そしてバブルを終わらせたのは、(6) 1989年から1990年にかけて日銀が行った公定歩合引上げ(たてつづけに5回実施して、一年たらずのあいだに2.5%から一挙に6%まであげてしまった)、(7) 1990年の大蔵省通達(映画のテーマである「不動産融資総量規制」)。このように、一口に「バブルの原因」といっても実は多種多様である。(7) だけをとりあげるかわりに (6) だけを強調することもできるし、また例えば (1) の段階で消えるべきもの(不効率で不要な銀行)をちゃんと消していれば、という風にいろんな結果論を語ることもできるはず。

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このページは、eiichiが2008年1月12日 19:26に書いたブログ記事です。

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