自宅近くの図書館でなんとなく手にとった本(『心の旅』宮本英世)を立ち読み、「ディーリアスを教えてくれた彼女」という短編が印象に残った。筆者は、青年時代から40有余年にわたり、クラシック音楽=金持ちの趣味=「自分のような貧乏人には高嶺の花」という「偏見」を抱き続けているそうだ。しかし、現在の職業は、名曲喫茶の経営者。 この方(以下、「筆者」)は若い頃に、友人の紹介で、裕福な家庭のお嬢さんとおつきあいをしていた。環状線・某駅に近い高級住宅地にある彼女の実家には、輸入ものの高価なLPレコードが山のようにあり、彼女は、1960年代当時の日本ではまったく知られていなかった作曲家の名前をつぎつぎと挙げては、筆者を「威圧」したそうである(といっても、イヤミな風でもスノッブでもなく、ごくごく自然に知性がにじみ出るような感じで)。そのなかに、英国の作曲家ディーリアスの名があった。筆者は、「イギリス人らしい中庸と抑制のきいたその作風」に魅せられ、彼女の豪邸を訪ねるたびにディーリアスをリクエストした。が、ある秋の日、この淡い交際に転機が訪れる。彼女は、筆者の下宿を見てみたいと言い出したのだ。四畳半一間の下宿住まいだった筆者はあわてて、とても見せられるような部屋ではないからと繕った。彼女からの誘いが間遠になり、やがてぷっつりと途切れたのはそれから間もなくのこと。「今でもディーリアスを聴くと、二人して聴いたあの部屋や窓からの眺め、静かな町並みや欅などが鮮明に蘇ってくる」そうである。 青春の恋の傷手は根が深い^^。これほどの経験者が語るのだから、やはり私らのような貧乏人には高嶺の花なのかもしれないが、とりあえず、ディーリアスを Amazon に注文した(名匠 Sir バルビローリ指揮の管弦楽集2枚組が、たったの2185円 ^^)。
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