昨日昼休みに、2010年向け大学案内パンフレットの業者との打ち合わせ。 別の業者が作成した大学院案内パンフレットの キャッチコピー に閉口していたこともあって、「もっと厳粛に・もっとアカデミックに」とこだわりすぎたかも・・・。で、この打ち合わせのなかで、キャッチコピーの一部を(直接に)貶してしまった(ライターの方にはホントにごめんなさい)。実は、大学院案内のものほどおかしくはなく、ちょっとひっかかるという程度なんだけど、「経済学は人間学」というフレーズ。
ある一方向に怒濤のように急速度で移動していくバッファローの一群がある。それぞれのバッファローにはそれぞれの意思があり、なかには違う方向に進みたいと考える者もいるのだが、なにせ流れが急なので、群れに従って、群れと同方向に進むしかない --- これは「疎外」という言葉の意味を説明するために大塚久雄が使った比喩(をパラフレーズ^^したもの)だが、崖の上からその様子の全貌を眺めているのが、経済学者。彼の役割は「疎外の構造分析」である。つまり、なぜ群れがその方向に急速で移動するのかを解明すること。この際に、それぞれのバッファローの心理や行動の分析はどれほど重要な意味をもつのだろう。まぁもちろんいくつか思い当たる点はあるが、とりあえず、そういう側面を重視する人は少数派だし、うちの学部にはそういうことをやる人は未だいない。
それにしても、どこからこんなフレーズが出てきたのかとググってみて、すこし驚いた。『現代経済学の巨人たち』(日経新聞社)という本のなかで、G.S.ベッカー(人的資本論)を紹介する章のタイトルがこれになっている。「ベッカー、経済学は人間学」。ここからの引用かな。。でも、結婚という行動までも「代表的個人の合理的計算」によって説明しようとするシカゴ学派のアプローチと、「人間学」がどうつながるんだろう^^。既に廃刊になっているので、Amazon で中古本を注文してみた(175円)。
追記 11/Oct)中古本が届いたので、「経済学は人間学」のくだりを一読してみた。が、記述は曖昧^^(どうやら、ベッカー教授は若い頃に「人間学」に興味を持ち、経済学より社会学を志したということらしいんだけど・・・)。まぁ、ともあれ、ベッカー教授の業績は、教育や結婚などのあらゆる人間行動を、代表的個人(個々の特質を取り除いた平均的抽象的な仮想人)の合理的計算によって説明しようとするシカゴアプローチに先鞭をつけたということだろう。「経済学は人間学」ではない。なお、この本は廃刊になっているが、同じ出版社から同趣旨の新刊が出ていて(『経済学・名著と現代』日経新聞社)、ベッカー教授の章の執筆者は変更されている(新刊のほうは、明快で含蓄に富む文章になっている)。