法人実効税率の算式

(休み明け一発目の講義準備に)法人実効税率の算式を調べていて、奇妙なことに気づいた。ネットで検索しても、たいがいのサイトは公式を示すだけ。公式がどのように導出されるのかを説明している場合でも、わかりやすく適切な解説は見あたらなかった(たとえば、Wikipediaの説明や、ここなど)。 すっきりした数値や公式の裏にはなにか仮定がある。そのからくりを知らないと、騙されているのではないかと不安になる。日本の実効税率の計算では、以下のように、定常状態を仮定しているのだろう(この仮定を明記しないと、納得できる説明にはならない)。

第t年(今年)の課税所得をA(t)、法人税支払額をT(t)、t-1年(昨年)の事業所税支払額をB(t-1)、法人税率(国税+住民税)をa、事業所税率をbとすると、

T(t) = ( a + b ) { A(t) - B(t-1) }
さらに、昨年の事業所税支払額B(t-1)は
B(t-1) = b { A(t-1) - B(t-2) }
年々の課税所得の伸び A(t)/A(t-1) = g を定数とすると、上の二式から次の(安定な)定常解が求まる。
実効税率 = T(t)/A(t) = (a+b)*g/(g+b)
さらに、g=1 とする。つまり、年々の課税所得はずっと同じと仮定したものが、通常の実効税率の算式である。
実効税率 = (a+b)/(1+b)
最後の式から、たとえば東京に本社を置く企業(法人所得800万円以上)の場合には a=35.19%、b=9.6%だから、実効税率は 40.87%。でも、成長企業の実効税率はこれより高い(5%成長で41.03%)。マイナス成長の場合にはこれより低い(-5%で40.67%)。

なお、定常状態などというのは仮想の状態なので、この仮定が妥当かどうかは別途に吟味される必要がある(5,6年で収束し妥当、簡単なシミュレーションを行う Mathematica のコマンド例)。

このブログ記事について

このページは、eiichiが2009年1月 3日 15:02に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「Political Compass」です。

次のブログ記事は「放送大学の集中放送」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 5.13-ja