呪われた青年

友人の話にヒントを得た、作り話です。

13名のうら若い男女(男5名+女8名)が7泊8日の合宿旅行に行った。ベッドルームには、ダブルベッドが6つとシングルベッドが1つあった。彼/彼女らは、毎晩、くじびきで、寝る場所を決めた。で、不幸な青年が一人いて、彼は、たった二晩しか女性とベッドを共にできなかった(残りの四晩は男とベッドを共にし、一晩はシングルベッドに一人で寝たらしい)。合宿がおわった直後から、彼は、「呪われた青年」と呼ばれている。

彼がほんとうに呪われているかどうかを統計学的に検定したい。

この場合、「呪われている」とは、公平なはずの抽選が人智を越えた神(悪魔)の力により彼にだけ不利に作用したこと、と考えよう。そして、帰無仮説は「彼は呪われていない」である。まず、この帰無仮説の下で、上のような事態が生じる確率を計算してみよう。

  • 13名(男5、女8)が、くじで、寝る場所を決める
  • ダブルベッド6つ + シングルベッド1つ

(A) ある男子が、女子とペアで寝る確率は、(シングルベッドのくじを引かない)×(となりの場所を他の女子がひく)=(12/13)*(8/12)= 8/13 (B) ある男子が、男子とペアで寝る確率は、(シングルベッドのくじを引かない)×(となりの場所を他の男子がひく)=(12/13)*(4/12)= 4/13 (C) ある男子が、シングルベッドに寝る確率は、(シングルベッドのくじを引く)=(1/13)

だから、7晩のうち、(A)女子とペアになった回数が a 、(B)男子とペアになった回数が b 、(C)一人で寝た回数が c となる確率は

(8/13)^a * (4/13)^b * (1/13)^c * C(7,c) * C(7-c,a)

ここに、C(x,y) は、x 個から y個を選ぶ組合せの数。

これは多項分布の関数である。多項分布の周辺分布は二項分布。そして、いまの場合にはとにかく、(A)女子とペアになる回数、これが焦眉のポイントなのだが、この平均は (8/13)7=4.3、分散は (8/13)(5/13)7=1.66。正規近似すると、a の下側5%点(平均-1.645√分散)は 4.3-1.645√1.66 = 2.18。サンプルが少ないので、厳密に、周辺確率を計算してみると・・・

女子とペアになる回数 a が 2 以下となる確率は 8.2%

これより、帰無仮説「彼は呪われていない」は、10%の有意水準で棄却できる。つまり、「彼はやはり呪われている」。

追記) 自分への備忘録もかねて(この歳ではすぐに忘れるので^^)。 a の周辺分布を描画する Mathematica スクリプト。二項係数 C(x,y) は、Mathematica では Binomial(x,y)、R では choose(x,y)。 Mathematica では実数値の引数も可能。

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このページは、eiichiが2009年2月18日 00:48に書いたブログ記事です。

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