趣味の楽しみ方

趣味を楽しむのはカンタンなことだ。たとえば乗馬を楽しみたいのなら馬術に通じていればよい、通じていなくとも馬術をまじめに学ぶ姿勢があれば十分だ。しかし、若きマルクスも言うように(『経哲草稿』貨幣の章)、馬に乗れない者が乗馬の達人を自称しはじめるとおかしなことになる。「キミが愛しても返しの愛を呼び起こさないとすれば、それはひとつの不幸」なのだ^^。

先日、ある「写真SNSサイト」(を冷やかしで数日間利用してみて、そ)の実態にちょっと驚いた。このサイトでは会員をランク付けしていて、最下層から最上層まで五つの階級から成る、なんともおかしげな「封建社会」が形成されている。会員はお互いの写真を評価しあい、「お気に入り」投票を行う。他の会員から高い評価を受けた人がより高い地位につける。この仕組み自体は一見公平なものに見えるが、実態は、どうにも珍妙な世界である。たった数日間の観測だけれど、連日数千枚?の写真が新たにアップロードされるなかで自分の写真を他人に評価してもらうためには、どうやら、手立てはふたつしかないのだろう。ひとつは、仲間どうしで投票しあうこと。もうひとつは、既に高い地位にある会員に取り入ることである。要するに、一般社会でいうところの「お手盛り」と「ごますり」によって、会員の地位が定まっているように見える。面白いのは、一般社会では対立するグループ間の争い等によって過度のお手盛りは抑制されるはずなのに、ここではそうした抑制がまったくきいていないように見えること。他人の写真を批判することなどはもってのほか、「ここをこうすればよい」といったコメントのたぐいもまったく見かけることはない。ただただ、お互いを褒めあうのみである。その結果として、私のような(30年のブランク後に復帰した)ヘボの目から見ても、最上層に位置する会員の(うちの少なくとも数名の)写真には、感性・技量・思想のいずれにおいても、さほど卓越したものを見いだすことはできない。その証拠に、ご本人たち自らも「自分は素人だ」と公言しているではないか。なんともおかしげな世界ではないだろうか。。

アンデルセン童話「裸の王様」じゃないけれど、たとえば、女スリが見知らぬ男の財布をまさに抜き取る瞬間の写真を、花嫁が「一生ついていきます」と花婿の腕をギュっと握りしめた瞬間だとこじつけた「ゴト師」がいるとせよ。それに対して、「熱い思いと幸せの象徴」「後ろ姿が多くを物語る感動の一瞬」などなどと絶賛する者が後をたたず、その空気を読めば、正直に率直に「その女はスリだ(王様は裸だ)」などと言えるわけもない。こんな実態が蔓延しているとしたら、単に可笑しいとかアホらしいとかを通り越して、社会学心理学あたりのまじめな考察対象にすべきやね。

このブログ記事について

このページは、eiichiが2009年8月 5日 23:37に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「SPSS、やはり・・・」です。

次のブログ記事は「南大阪景況調査」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 5.13-ja