本学では、この春学期をもって、在学生へのノートPC貸出制度を終了する。このことが決まったときに学内ではほとんど反対意見はなかったように思うが、春先にある父兄(若干一名)から、やめるのはけしからんという電話があったらしい。この人はその後もしぶとく存続を要望しておられるようだ。水曜日の某委員会でその主張の概略を聞いてちょっと驚いた(ここには書けないけれど)。
貸出制度を終了する理由は以下のようである。この制度が発足した当時のPCは高価なぜいたく品だったが、いまや数万円でノートPCは購入できる。奨学金や学生アルバイトの稼ぎで手の届く金額になったということだ。じっさい利用者数は年々減少を続けており、昨年度は全学生の数%ほどにまで落ち込んだ。いっぽう、この制度を維持するために投じた予算は半端な額ではない(教職員平均年収の○倍)。管理上もひどい問題が生じていて、数ヶ月借りっぱなしのまま返さないので大学職員が下宿まで回収に行くとか、壊されて返却されることはしょっちゅう、めちゃくちゃに壊れて返ってきたためにメーカーの修理保険すらきかなかったという事例もある。
そもそもこの制度はおかしい。不完全な制度だと私は思う。PCが必要だが自宅にPCを持てない --- そういう学生を援助するための制度であるはずなのに、実際に借りに来た学生がほんとうにそういう学生かどうかを判別する仕組みが備わっていないのである。PCは大学が貸してくれるからその分のおカネは遊興費に回せばよいという学生がいたとしても、それを排除することができない。経済学の語法では「情報の非対称性のためにモラルハザードを排除できない制度」にあたるはずだが、どうもしっくりこない。この貸出制度では、大半がフリーライダーとわかっていながら、むしろモラルハザードを奨励するためにムダなお金をつぎこんできたようにさえ思える。
奨学金をもらってもアルバイトをしても数万円のPCが買えないという学生がいないとはいわない。が、そういう学生を援助するためには、別の制度が必要だ。奨学金と同様の仕組みを作って、きちんとした審査を行ったうえで援助を与えるようにすればよいことではないだろうか。