教科書の誤り

一昨年あたりから(院生とミクロをやるようになってから)ずっと気になってるんだけど(以前にも記した気がするが)、ミクロ経済学の教科書のなかには、余剰分析(価格規制にともなう消費者余剰・生産者余剰の変化)の説明が不十分なものが多い。こちらのサイトなどは誤りの典型。正しい解説例はこちらのサイトなどにある。

たとえば、最低賃金制によって、労働者側の余剰は下図の橙色の面積になる。 wage.jpg なぜなら、最低賃金Aで働きたい労働者は AB 。彼らが全員雇われたときの余剰は △ABC だが、実際には AD だけが雇用される(雇用される確率は全員均等に AD/AB)。したがって、労働者側の(期待)余剰は、△ABC × AD/AB = △ADC 。

でも、ボクの学生時代(30年前)には、こうは教わらなかった。なぜか、留保賃金の低い労働者から優先的に雇われていくという仮定を置いて、最低賃金制がもたらす余剰の減少(社会的なロス)を小さく見積もっていた。これが今も尾を引いているわけだ。しかし、この違いは大きい。「最低賃金制によって労働者の余剰は増えても企業側の余剰は減少する」という言い方と、「最低賃金制によって労働者側の余剰も企業側の余剰もともに減少する」と言うのでは含意がかなり違ってくる。

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このページは、eiichiが2011年6月23日 19:43に書いたブログ記事です。

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