産業特性と地域特性など

地域経済の分析をする際に、産業特性と地域特性を分離することは重要だと思う。地域の経済動向が産業構成の違いだけで説明できるなら、「地域」にこだわる必要などないはずだから。地域分析は、量的な産業構成ではなく、地域独自の、どちらかというと質的な差異に着目する必要があるように思う。
いま指導している博士課程の院生は、都道府県別の倒産率の違いをテーマにしているのだが、昨年度末に出してきた博論では、産業特性と地域特性をごちゃまぜにした非常に粗っぽい分析をしていた。これじゃあ話にならないと批判したら、じゃあオマエが指導しろということになったんだけれど(怒)、しかし、彼の指導をはじめてからいくつかの文献を読んでみたところ、同様の稚拙なデータ処理が少なくないことに気づいた。とくに日本語で書かれたものはみごとに玉石混淆。たとえば先日、献本(というか、いらないというのに持って帰らされた)某自治体研究所の「大都市型産業集積とナントカ」の一節などは、事業所密度等のデータを白地図に色分けしただけ。データ処理に工夫も苦労も見いだせないし技法もオソマツに過ぎる(こんな小役人作文を「施策立案」と称されたのでは府民の血税がもったいない、と思うのは私だけか?)。

日本経済学界の「プリンス」Y教授のオークションに関する論文を、修士課程の演習で読み始めた(なんでも、教授が学部学生の頃に執筆して大内兵衛賞をとり、査読雑誌に掲載されたものだとか?)。今週は、独占とクールノー複占の厚生比較。初等数学だけで証明をかさねていく独特の論法、かえって難解だったり・・・。

本田由紀『教育の職業的意義』(帯のキャッチは「若者に希望を!」)。前著『ニートって言うな!』でファン^^になった著者なんだけど、今回の本を読んでまず感じたことは、さすがに東大・・・。いまや死語となった社会科学用語がつぎつぎと登場して、文科省の「社会人基礎力」や「キャリア教育」への徹底的な批判が展開される。学生を一人でも多く就職させるためならば、なりふりかまわず?「産学協同」でもなんでもアリの一般大学とは、やっぱり一線を画している。

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このページは、eiichiが2012年5月31日 03:04に書いたブログ記事です。

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