ひょんなことから(ある人から暗示されて)、夜半に、アンデレクロス(本学の在学生向け季刊誌)の今春号を見た。ロンドン五輪を多角的に眺めてみようということで、各学部の教員が、それぞれの専門の立場から「オリンピック」を論じている。でも、経済学部のものを読んでいて、なんだか恥ずかしくなった。
今回のロンドンオリンピックが日本経済にもたらす経済効果については・・・直接的な消費の押し上げが3,687 億円見込まれ、この波及効果として実に2.18 倍にもあたる8,037 億円の生産を関連産業に誘発するそうです(電通総研による推計)。この計算にあたっては「産業連関表」という統計ツールが用いられます。
電通総研も小銭稼ぎのために(良心の呵責に目をつぶって)目の子算をしたのだろうが、シンクタンクが片手間にやるようなことを、「大学教員」がそのまま引用などするなよ。「波及効果」などというものはイベントの経済効果を誇張するためのまやかしだ。直接的な最終需要の増加が 3687 億円ならば、経済全体での付加価値の増加もこれと同額、これ以上になることはない。
7月23日 追記)
投入係数 aij 第i産業部門の生産額 Xi 付加価値額 Vi 第i産業部門への最終需要を Fi とすると
Xi = ∑j aij Xj + Fi = ∑j aji Xi + Vi
各辺をiで合計すると ∑i Xi = ∑i ∑j aij Xj + ∑i Fi = ∑i ∑j aji Xi + ∑i Vi
つまり ∑i Fi = ∑i Vi
産業連関表からわかることは、パイの増分(最終需要の増分)が国内外の各産業にどう振り分けられるかということ(固定価格・数量調整の前提で)。国外産業へも振り分けられる(輸入)から、実は、GDPの増分は最終需要の増分より小さくなる。