対日経済制裁、デフレ脱却論

三橋貴明という人は(経済学研究者としては)ちょっと大雑把な気もするし、TV番組などでは瞬間芸で相手を威圧するあたりがイヤな感じだったんだけれど、最近の中韓とのいざこざにまつわる彼の発言を洩れ聞いて、意外といいヤツ(売れっ子評論家に対して失礼か^^)かもしれないと思い直している。
というのも、2回生の演習で尖閣問題のことを聞いてみたら「わかりません」という返事ばかりで衝撃を受けたので、サンフランシスコ講和条約や李承晩ラインなどを説明して、「正論」11月号に掲載された三橋氏の短い文章(タイトルは『対日経済制裁だ?笑わせるな』^^)を紹介してみたのだ。三橋氏の試算によると、対中貿易の停止が日本の経済成長に与える影響はマイナス0.33%ポイント、また例えば中国共産党が中国国内の日本人資産を全部凍結したとしてもトータルの損失は8兆円程度とのこと(数字は確認する必要があるけれど、こうした分析はもっとなされてしかるべきでは・・・)。

ちなみに(蛇足ながら)、対韓貿易については夏休みにボクも軽く確認してみたけれど(↓)、日本から韓国への部品や素材の輸出を止めてみる(遅らせてみる)のがいちばん効果的ではないか。

なお(まったく別の話で、蛇足の蛇足ながら)、三橋氏といえば「デフレ脱却論」だが、こちらのほうは、やはりおかしい。そもそも「デフレ脱却論」とは、1990年代の「インフレターゲット論」(「インタゲ」)が名を変えただけのものだろう。バブル崩壊後の90年代前半、多くの人は景気はすぐにまた良くなると期待したものの、待てど暮らせど景気は良くならず、90年代後半から00年代前半にかけて、「構造派」と「インタゲ派」の論争が行われた(「構造派」というグループが存在したわけではなく、「インタゲ派」の人たちが主流派経済学者の多くを「構造派」と呼んで批判しただけのことなんだけど・・・)。インタゲ派は、いまの「デフレ脱却論」と同じように、アクティブな金融政策を主張して日本銀行の無為無策を激しく非難した(当時、「全国の公園を日銀が買い上げろ」とまで言った国会議員もいた)が、この「論争」の本質的な争点は、日本の長い不況を構造的なものと見るか一時的なものと見るか、この一点につきるように思う。長い不況(長期停滞)が日本経済の構造に起因するものならば一時しのぎの景気対策は無意味だ(有害ですらある)が、日本経済の構造に問題が無いのならば一時しのぎの景気対策によって成長軌道に復帰できる。もちろん、後者が「インタゲ派」。ただ、最近の「デフレ脱却論」には、たとえば、日本の技術力は世界一だから日銀が円安誘導するだけで日本経済は復活するのだといった超楽観論や、TPPへの強硬な反対論者もいたりして、整合的に理解するのが難しくなってきたようにも思うけれど・・・。

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このページは、eiichiが2012年10月19日 13:46に書いたブログ記事です。

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