インフレのメリット?

大学の地域貢献?とかいうことで、近くの市民ホールで講座を持つことになった。タイトルを「図表で読み解く日本経済(入門)」、副題を「デフレ脱却/構造改革、どっち?」などとして、この副題の解明^^を目標に、いわゆる「どマクロ経済学」を10回ほどボク一人で喋ることにした。けれども・・・最近の(総選挙に向けた)経済政策論争?の盛り上がりを見るにつけ、こんな講座を企画しなきゃよかったと思い始めてる(お客様は地域の団塊世代以上、中小企業経営者なども?^^)。

とにかく、巷ではデフレ脱却派の舌車が絶好調で、自民党は3%(民主党は1%?)のインフレ目標を「公約」したらしい。でも、インフレのメリットとは、いったい、なんなのだろうか。そもそもインフレ目標が達成されうるかという点は脇に置いて、もしインフレになれば(たぶん)

  • 実質金利が低下する(フィッシャー方程式)
  • 円安になる(購買力平価説)
でも、バブル崩壊後(1990年代)の「デット・デフレーション」(巨額の負債が経済活動を停滞させる)状況でもあるまいし、実質金利が下がって(負債の実質負担が軽減して)も、将来期待が冷え切った現状では国内投資が増えてくるとは考えにくい。むしろ資産が目減りして(ボクにもなけなしの貯金が・・・^^)、需要はさらに落ち込む可能性もあるのでは? 円安にしても、輸出は多少回復して一息つける企業もあるのだろうが、すでに生産拠点はどんどん海外に移転していて、多少の輸出の回復で日本全体の成長トレンドが上向くとは思えない。むしろ、貨幣賃金が物価上昇に追いつかなければ、輸入品とくに生活必需品類の価格上昇が家計を直撃する可能性もあるのでは?

デフレ脱却派の拠り所「デフレ・スパイラル」(デフレだから→企業収益が悪化して→所得が減少して→需要が減少して→さらにデフレが深刻になる)というのは、よくわからない話だ。でもこれって、一連の流れから「デフレ」という単語を消去してやると、とてもわかりやすくなる。つまり、企業収益が悪化しているから→所得が減少して→需要が減少して→さらに企業収益が悪化している。そして、企業収益が悪化するのは、日本の国際競争力(安くて良い商品をつくるチカラ)が低下しているからだ。デフレもインフレも、競争力とは無関係だろう。
ついでに、デフレ脱却派のお題目「需給ギャップをなくす」(稼働率を上げて、倒産・失業を減らす)というのは、単に、財政支出を増やして(財政赤字をさらに増やして)一時的に需要を増やすというだけの話だろう。内需は(一時的には)多少回復して一息つける企業もあるのだろうが、永久に財政支出を増やし続けることはできない。いっぽうで、国の借金は確実にどんどん積み上がっていく。もちろん必要な公共投資は行わねばならないけれど、いずれはつぶれる弱い産業の一時しのぎ延命措置を将来世代のツケで行うという側面もあるのでは?

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このページは、eiichiが2012年12月 2日 00:38に書いたブログ記事です。

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