本日の市民カレッジは「格差社会の虚実」というテーマで80分くらい話した。格差社会論の虚実、すなわち「ウソ」と「マコト」、論旨は大略以下のような感じ。
- 資産格差は70年代から(トレンドとしては、むしろ)平等化の傾向にある。2000年代前半(小泉政権下)の短期間を取り上げて格差拡大を強調する議論は、より広い視野から再考されるべき(そのような議論の例としてこちらなど、ジニ係数の長期動向は国民生活白書平成17年版等にある)。
- 所得格差は、たしかに、70年代後半あたりから徐々に「不平等化」が進んでいるように見える(ジニ係数が漸増している)が、これは高齢化によるものだろう。もともと所得格差の大きい高齢層の人口シェアが増えているのだから、日本社会全体でジニ係数が上がっていくのはあたりまえ。
- 我々の社会には「機会の平等」と「結果の平等」を峻別する智恵が必要。「結果の平等」を偏重して、すこし格差が広が(ったようにみえ)ると直ちに「格差社会化が進んでいる」と結論づけて騒ぐのは慎むべき。
- ホントに深刻な「格差」は、正社員と非正規社員のあいだの格差、それから「世代間格差」と「世代効果」。将来世代は8000万円の借金を背負って生まれてくる。財政健全化や社会保障制度の抜本的改革は、困難な長期的課題ではあるけれど、避けては通れない。
毎年大学でやっている貧困率の計算例で、笑いがとれた^^。