非伝統的金融政策の効果

本日の市民カレッジは、2000年代からはじまった非伝統的金融政策の効果、とくにアベノミクスについて。

  1. 昨年秋まで(つまり、アベノミクス以前)の量的緩和政策に効果はなかった。ベースマネーが異常に増えたが、マネーストックは増えず、銀行貸出はむしろ減少して、物価は下落した。ソロスチャート(為替レートは日米ベースマネー比の増加関数という命題)もあっけなくくずれた。
  2. ところが、アベノミクスは、同じ手法によって効果を発揮した。期待インフレ率はたしかに上昇しているようだし、昨年秋から円安トレンドが続いている。
  3. もともと円安に転換する素地が醸成されていたという背景もあるが、やはり、コミットメントの強さ(この首相ならとことんやりかねない^^という期待)が功を奏したと見るべきだろうか。
  4. しかし、これから先、名目金利の上昇を一定範囲に抑えてインフレ目標を達成できたとしても、また、賃金が上昇してくるとしても、投資や消費が着実に増えて持続的な経済成長につながるかどうかは不透明。かりに一定の景気回復が見られたとしても、経済成長による税収増で財政難を回避できるとは考えにくい。
物価連動債の利回りから期待インフレ率を推計するくだりをどう説明するか悩んで、金融論のテキストを何冊か見たんだけれど、わかりにくい説明ばかりでちょっと辟易。しかし結局、ラフに言葉で説明して、他のテキストと同様にわかりにくい説明になってしまったようだ^^。まぁ、このあたりは、次の機会への反省点ということで・・・。

講座修了後に、いつも最前列で聞いてくださった女性から達筆の書状(ハガキ)をいただいた(「刺激に感謝」の趣旨、講師冥利に尽きる^^)。

 
アベノミクスの今後は、景気回復/財政破綻/元の木阿弥?

注)通常債の利回りー物価連動債の利回り=期待インフレ率 となることは数学的にはカンタンな話で、連動債の価格をY, 通常債の価格をX
 として,(インフレ率ゼロのときの)収益はともにAで等しいとする。連動債の利回りをRy, 通常債の利回りをRx, 期待インフレ率をpとすると
, 市場の裁定により A/X = A(1+p)/Y つまり (1+Rx) = (1+p)(1+Ry), この両辺の対数をとり線形近似すると Rx = p + Ry となる。

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このページは、eiichiが2013年7月17日 15:13に書いたブログ記事です。

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