昨日、地方財政専門の若い同僚から、生活保護にまつわる二つの用語を教わった。もらう必要のない人が生活保護給付を受けることを「濫給」といい、もらう必要がある人が生活保護を受けられないことを「漏給」というそうだ。いずれもメディア等でよく騒がれてはいるが、実際にこれらがどれくらいの比重なのかは興味あるところ。濫給つまり不正受給は1万6000件(0.35%)に対して、漏給は600万〜800万といった数字をあげる人もあるが、推定の精度はよくわからない。とくに、不正受給率0.35%という数字は、露呈した氷山の一角ではないか。大阪の保護率の高さ、たとえばこちらのサイトの失業率との相関図などを見るにつけ、不正受給率はもう少しは高いのではないかと疑いたくなる。ちなみに、大阪市の公式統計によると保護率が2%を割っているのは福島区と西区だけ、とくに福島区は最小で1.45%(私が生まれ育った頃の福島区のイメージからはちょっと意外だけれど・・・)。
なお、第一人者の研究(こちら※PDF)によると、近年の生活保護率の上昇は不況要因(失業率や有効求人倍率など)だけでは説明できなくなっているようだ。高齢化等の要因も考えられるが、この研究がもっとも着目しているのは給付主体(厚労省や自治体)の政策スタンスの変化、すなわち2009年3月以降の受給基準の大幅緩和だ。この基準緩和がリーマンショックと同時期にはじまっているだけに、この分析は興味深いというもの。一般には(こちらのページの解説のように)2009年からの保護率急増はリーマンショック(失業率の増大)によるものと信じられているけれど、実は、基準緩和という要因が少なからず影響していたということだ。2009年3月といえば麻生内閣の頃だが、よほど注意していないと、こんな細かな制度変更のことはわからない(たとえば麻生内閣(WikiPedia)の記事には出てこない)が、こういうことが実際の地方財政の動きを左右していることにはあらためてちょっと驚く。
実は、先に終わった市民カレッジでも、こんなシーンがあった。日本のデフレは名目賃金の下落が原因、ではなぜ日本でだけ賃金が下落したのかというと、日本では正社員解雇のコストが異常に高く(労働者本人にとってはもちろん、企業にとっても)賃金で調整して雇用は守るというのが日本型モデルだから・・・とかなんとか説明していたら、「雇用調整補助制度が賃金調整を促しているのでは」という質問を受けた。即座に答えられず、少し調べてみたが、この制度の定量的な分析は未だほとんどなされていないらしい。