2002年から2011年まで英国BBCで放映された人気ドラマ。Spookはスパイを意味する口語で、英国 MI-5(機密諜報部)のエリート諜報員たちが死闘を繰り広げ、国際的な密謀から英国を救うというストーリー。毎回、英国にふりかかる国難がギリギリのところで回避され英国の平和と繁栄が守られるわけだが、その国難の設定が巧みでほんとうに起きてもおかしくないようなものばかり。シリーズ1からシリーズ10まで全DVDを Amazon.UK から個人輸入済みなんだけど、数年前にシリーズ7まで見終えたところでストップしていた。久しぶりに押し入れから取り出してきてシリーズ8,9,10を最後まで見切ってしまおうということで・・・。欧州型PAL形式のDVDは日本のBDプレーヤでは再生できないので、PCで再生してHDMIで転送して大型テレビで鑑賞。
一貫する傾向というか、全ストーリーに通底する主題がふたつあって、まず、アメリカをはじめ他の先進(民主主義)国は表面的には協力的だが、いざという時には何の助けにもなってくれないことがとことん強調されている(というか、当たり前の大前提になっている)。とくにロシア人のスパイは相当に冷酷かつ狡猾に描かれていて、まぁ英国人一般のロシアに対するスタンスがうかがえるというもの。また、主人公(MI-5のメンバー)たちは個人的には優しい人格者ばかりなんだけど、ほぼ毎回のように、「数千人数万人の命を救うためには数人の犠牲はやむをえない」という "math"(功利主義の算術)で問題の最終解決がはかられる(そういえば「一人の命は地球より重い」なんて言ってた首相がいたがそんな日本語は英語には翻訳できないのだろう^^)。
インドやパキスタン(英国の元植民地)は基本的に愛すべき同胞として描かれているが、「頼むからお互いに仲良くしてくれ・仲良くしようよ」という感じ。中東アラブあたりの描写は微妙で、何をしでかすかわからない連中という位置づけだろうか、この地域の国が悪者になるときには架空の国名が使われる(Tazbekistanとか^^)。やっかいな事件の多くはカネと宗教にまつわって生じるけれど、犠牲になるのはいつも純粋な若者や貧しい人たちで、黒幕はかならず拝金主義者というシナリオもおもしろい。記憶する範囲では、IRAあたりの英国内の紛争や難事は一度も話題になっていないが、これは highly sensitive (冗談ではすまされない)という配慮だろうか。
ちなみに、中国はときどき「脅威」として引用されるが、日本は世界の権力闘争のなかにまったく登場しない。「日本」が登場したのは、記憶する範囲で2度だけ。MI-5 のアジアにおける "asset"(つまり、重大な情報を MI-5 に流してくれる大物スパイ=中国人)が「情報がある」とか「会いたい」とかいうことを伝えるときのサインに、日本のJリーグの試合結果を秘密の合い言葉として使った場面(ガンバ大阪が前半にコーナーキックを10本とったとか、あるいは鹿島アントラーズが後半にペナルティを得たとか、チーム名が正確に引用されていた^^)。もう一度は Financial Eclipse という特殊用語が登場した回で、英国政府が財政破綻の危機に直面したときに「日本のように」という表現が数度語られた。