駅の売店で「韓国が背負う嘘の代償」という大見出しが目にとまり、某大衆誌(小学館)を買ってしまった。本題の韓国特集のほうは、ベトナム戦争時の韓国軍の蛮行にはじまり、部品ひとつ作れない「技術大国」の惨状など、よく耳にする「物語」が並んでいるだけでほとんど有益な情報はなし。世の雰囲気に迎合して販売を伸ばしたいのだろうけれど、ちょっと行き過ぎ、これではむやみに嫌韓を煽るだけでは。。
パラパラとめくっていくと同様の記事が続くが、『財務省も政治家も御用学者も嘘ばかり・日本の国民負担率は実は高かった』というタイトルに目がとまった。あまりに単純なトリック(というより、勘違いだろう)^^。意に反して定説を補強するデータが提示されている。面白い勘違いだと思うので、論点を整理するグラフを作成してみた。
グラフの青い棒が、国民負担(税負担+社会保障負担、GDP比 *1)。緑の棒が、政府から国民への還元(社会保障支出、GDP比 *2)。したがって、国民の純負担率(国民負担ー社会保障支出、グラフの紫の棒)は、米国6.8%、日本8.2%、イギリス15.4%、ドイツ12.4%、スウェーデン15.9%、フランス16.6%となる。
あきらかに日本の国民負担率は低い。しかし日本の社会保障支出(緑の棒)はイギリスとほぼ同じ、ドイツに比べると少ないがアメリカよりもかなり多い。よって(おおまかに)日本は「低負担・中福祉」の国と言えるだろう。ここまでが「定説」。
しかし某大衆紙は、この定説を「まやかし」と断じる。その根拠は・・・国民純負担(グラフの紫の棒)に財政赤字(赤い棒)を加えるという荒業^^。「財政赤字は国民の負担」なのだから、これを足しあわせると、日本国民の「本当の負担率」(紫+赤)は8.2+13.2=21.4%となり、ドイツ17.8%やスウェーデン15.9%より高いということになる。
しかしこれこそトリック「まやかし」だ。財政赤字(国債増)は将来世代の負担であって、現在の国民負担ではない。現在の日本国民は、将来世代に負担を回すことによって(自らは低負担で)、中程度の社会保障を享受している(中福祉)ということ。。
*1 財務省「国民負担率の国際比較(GDP比)」
*2 国立社会保障・人口問題研究所「社会支出の国際比較(GDP比)」
ps. こういうグラフがエクセルでも作成できることを発見(試行錯誤の末に^^)。