おかしな出口調査

日曜夜は出先のホテルにて、住民投票の開票速報に見入っていた。関西テレビの実況では開票率80%台後半まで賛成票がリード、いよいよ大阪市消滅かと胸も躍ったが、土壇場で大どんでん返し。翌朝、淀屋橋MJBでコーヒーをすすりながら、ボケ—っと新聞をながめた。市長の敗戦の弁「民主主義はすばらしい」、けだし名言^^。

ネット上では、今回の投票結果は「シルバー民主主義の勝利(弊害?)」という見解が目につく。朝日新聞の出口調査によると、年代別で大阪都構想への反対が賛成を上回ったのは、70歳以上だけ。高齢層の高い投票率ともあいまって、全体では反対が過半数となったのだろうという解釈。でも、それは(数学的に)ムリだろう^^。

同様の試算をした人がすでにいるが(こちら)、ボクもやってみた。まず、大阪市の区別年齢別推計人口をこちらからダウンロード、各区での投票結果と出口調査の結果はWikiPediaの記事(大阪市特別区設置住民投票)より引用。ある区の年代別人口を N2 (20台), N3 (30台), ... , N7 (70台以上) として、各年代の賛成者率(出口調査の結果)を A2, A3, ..., A7 とすると、全体の投票率=66.83%の制約下で、各区における賛成総数を以下のようにあらわすことができる。

賛成総数 = K1 * 70歳以上の投票率 + K2

ここに、K1 = N7 * ( A7 - ΣNiAi/ΣNi ) でマイナス(Σはi=2から6まで)、つまり、70歳以上の投票率が上がるほどに、賛成総数は減少する。この式にあてはめてみると・・・たとえば北区では賛成総数は36019票だったが、こんな値になるためには、70歳以上の投票率は165%でなければならない(70歳以上の3人に2人が二度反対票を投じなければならない^^)。此花区でも 161%、都島区では 122%、西成区にいたっては 249%(70歳以上の全員が2.5回反対票を投じねばならない^^)。0%から100%の投票率の範囲で、このような選挙結果が生じることはありえない。つまり・・・

シルバー民主主義の勝利でも弊害でもなくて、単に、出口調査がおかしいだけのこと。

今回の選挙結果については、大阪の「南北格差」から投票結果を解釈した文章が面白かった(大阪都構想住民投票で浮き彫りになった大阪の南北格差問題)。でも、そんなに大仰なものでもなくて、要するに、大阪市全域一律の住民サービス体制が崩れることをおそれる人々が反対をしたということだろう(この点で、反対側のキャンペーンは効果的だった)。住民サービスの負担が受益を上回る区では賛成多数、逆に受益が負担を上回る区では反対多数ということ(QED)。70歳以上の人口より、市営住宅の戸数などのほうが有意な説明変数になると思うけどネ。

ps. 大阪市の区別年齢別人口はExcelのバイナリファイル(お役所仕事 orz)。でも、最近の R はこんなのでもヘッチャラ、必要な部分だけを直接に読み取ってくれる(各ワークシートを逐一csvに変換するような煩雑な作業は不要)。以下のような感じ(ライブラリ xlsx を利用、因子型を数値型に変換するところで30分ほど悩んだ^^)。

library(xlsx)
N = matrix(ncol=3,nrow=21)
dat = read.xlsx("~/Dropbox/R-Work/suikei-nennrei2013-2014.xls",sheetName="西成")
i = 1;
for(r in c(2,3,9,15,21,27,33,39,45,51,57,63,69,75,81)) {
  for(j in 1:3) N[i,j] = as.numeric(as.character(dat[r,j+1]))
  i = i+1
}

このブログ記事について

このページは、eiichiが2015年5月19日 04:44に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「マイナンバー」です。

次のブログ記事は「くどいが、高齢者ではない」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 5.13-ja