2017年1月アーカイブ

いまひとつ、健康関連の話で。いくつかの有名な週刊誌がしばしば、健康関係の特集を組んでいて、docomoのdマガジンや Kindle Unlimited で読み放題なので、ついつい読んでしまう。なかでも非常に興味深かったのは、一昨日にたまたま目についた、人間ドック学会「健康診断の新基準」。人間ドック学会というところが、大規模なデータ分析の結果、従来の常識をくつがえす新しい診断基準を提示したという(ことになっている)話題。関係者には旧聞に属することだろうけれど、授業ネタにも使えそうな面白いハナシだと思う。

たとえば、LDL悪玉コレステロールの正常範囲は60-119ml/dLとされてきたが、この「新基準」では72-178が正常範囲と改められている。これでは私の過去の検査値はすべて正常だったことになってしまう。さすがに驚いて、元の研究報告書にあたってみた(こちらpdf)。流し読みなので誤解があるかもしれないけれど・・・要するに、全国の人間ドックが保有する150万人のデータから「超健康人(スーパーノーマル)」1万5000人を選び出し、彼らの検査値の分布を正規変換して95%信頼区間をとったものが、上の「新基準」とされているようだ。

この「新基準」は発表当初から多くの批判にさらされたようだ。しかし、ネットで検索するかぎり、批判する側の切れ味もいまひとつで、要を得ない。「ふたつの異なる基準が並存すると混乱をまねく」といった指摘だけでは、果たしてどちらが正しいのかはまったく不明だ。一例を紹介すると、 こんな調子

人間ドック学会の調査は、これまでにない大規模なもので医学的に正しい。人間ドック学会は健康な人を検査し、お医者さんは症状がある人の検査を行うため、双方の見解が異なるのは当たり前だが、背景には、医療費を削減したい健康保険組合連合会と、患者が減っては困る病院側のせめぎ合いもある。

「医学的に正しい」という発言は意味不明だが、もとの作成方法から考えて、人間ドック学会の(調査結果を)「新基準」(とすること)は統計学的には誤りだろう。

そもそも、世間の100人に1人しかいない「超健康人」のうちの、さらに2.5%未満の人たちのコレステロール値が178を越えていたことは事実なのだろうが、これをもって、「コレステロール値170以上でもあなたはだいじょうぶ」などと診断することができるはずもない。
ベイズ定理の素朴な適用だが、「新基準に検査値がおさまる」ことを A として、「超健康人である」ことを B とすると、P(A|B)=0.95, P(B) = 0.01 が人間ドック学会の調査結果。そこで、たとえば私の検査値が新基準におさまったとして、私が超健康人である確率は P(B|A) = P(A|B)P(B)/P(A) = 0.0095/P(A)。P(A)とは検査を受けた人のうち「新基準」におさまる人のパーセンテージだが、これが50%とすると私が超健康人である確率は 0.0095/0.5 = 0.019 つまり、わずか2%。P(A)が10%としても私が超健康人である確率は 0.095/0.1 = 0.095 で10%弱である。

かつて、喫煙量と肺がんの相関をめぐって、JTと日本医師会がやりあった一件。もちろん医師会の批判が全面的に正しかったのだけれど、JTの誤った相関図を引用する愛煙家は未だにいる(タバコを吸うと、実は肺がんのリスクは減るそうでっせ)。上の「新基準」もすでに独り歩きしている感も・・・^^。

元旦に【森伊蔵】を開栓。ストレートとロックで味わってみた。一口含むとうなずける「上品さ」。すっきりした辛さのなかに自然の甘さ、のどごしの異常なほどのスムースさ。こういうのを「絶妙のバランス」というのか。たまたま飲み比べに選んだ【川越】の自己主張の強さがきわだつ。いやこれはこれで特注もの(定価購入)、ANAのビジネスクラスにも採用された銘酒で、こちらの荒々しさももちろん好きだ^^。

ところで、昨年11月くらいから、日々のアルコール摂取量を記録するようにした。いくつかの文章をネットで拾い読みした結果、いまのところ、以下のふたつの命題を信じている。

まず、【Jカーブ効果】(厚労省e-ヘルスネットなど)
酒は百薬の長である。まったく飲まないより、ある程度飲んだほうが長生きできる(成人病等による死亡率は減少する)。しかし当然ながら、限度を越えて飲み過ぎると毒となり、死亡率は上昇する。「薬」から「毒」に転じる臨界点は300g/一週間である(と、多くの実証研究が示唆しているようだ)。

たとえば一日にビール1リットル(中瓶2本)を飲む習慣は、健康に悪くない(むしろ、健康に良いとも言えそう)。ビールには5%のアルコールが含まれるから、ビール1リットルのアルコール含有量は 1000ml×0.05 = 50ml。これにアルコールの比重0.8を乗じると、1日のアルコール摂取量は 50 × 0.8 = 40g 、一週間では 280g となり、臨界点を下回る。

しかし、(私を含めて)フツーの酒飲みには、300g/一週間の上限はちょっと厳しい(1ヶ月ほど計測してみた結果、私の場合、週あたり320gあたり、一日平均で46gといったあたりだろうか^^)。そこで、次の命題。

Lelbackの【常習飲酒家】(参考文献はこちらpdf
日本酒換算で1日平均3合(アルコール64.8g)以上を摂取している者を「常習飲酒家」と定義し、これ以上のアルコール摂取は肝障害を起こしうる。さらに、日本酒換算で1日平均5合(アルコール108g)以上を摂取している者を「大酒家」と定義し、これ以上のアルコール摂取は重篤な肝障害を将来する危険量である。

常習飲酒家の一週間アルコール摂取量は453.6g。日本人の特性も考慮して、たとえばこちらの記事などでは、420g をこえないように調整可としている(ように読める^^)。

ps.
より新しい実証研究の論文を一本だけ流し読みしてみた(こちら)。いろんな偏相関の算出が試みられているが、地域と年齢と喫煙量だけでコントロールした結論がいちばん妥当に見える。それによると、まったく酒を飲まない人の死亡リスクを1としたとき、週150g未満の飲酒者のリスクは0.67, 週300g未満飲酒者のリスクは0.79, 週450g未満飲酒者のリスクは0.98,週450g以上飲酒者のリスクは1.33。

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