経済の最近のブログ記事

駅の売店で「韓国が背負う嘘の代償」という大見出しが目にとまり、某大衆誌(小学館)を買ってしまった。本題の韓国特集のほうは、ベトナム戦争時の韓国軍の蛮行にはじまり、部品ひとつ作れない「技術大国」の惨状など、よく耳にする「物語」が並んでいるだけでほとんど有益な情報はなし。世の雰囲気に迎合して販売を伸ばしたいのだろうけれど、ちょっと行き過ぎ、これではむやみに嫌韓を煽るだけでは。。

パラパラとめくっていくと同様の記事が続くが、『財務省も政治家も御用学者も嘘ばかり・日本の国民負担率は実は高かった』というタイトルに目がとまった。あまりに単純なトリック(というより、勘違いだろう)^^。意に反して定説を補強するデータが提示されている。面白い勘違いだと思うので、論点を整理するグラフを作成してみた。

グラフの青い棒が、国民負担(税負担+社会保障負担、GDP比 *1)。緑の棒が、政府から国民への還元(社会保障支出、GDP比 *2)。したがって、国民の純負担率(国民負担ー社会保障支出、グラフの紫の棒)は、米国6.8%、日本8.2%、イギリス15.4%、ドイツ12.4%、スウェーデン15.9%、フランス16.6%となる。
あきらかに日本の国民負担率は低い。しかし日本の社会保障支出(緑の棒)はイギリスとほぼ同じ、ドイツに比べると少ないがアメリカよりもかなり多い。よって(おおまかに)日本は「低負担・中福祉」の国と言えるだろう。ここまでが「定説」。

しかし某大衆紙は、この定説を「まやかし」と断じる。その根拠は・・・国民純負担(グラフの紫の棒)に財政赤字(赤い棒)を加えるという荒業^^。「財政赤字は国民の負担」なのだから、これを足しあわせると、日本国民の「本当の負担率」(紫+赤)は8.2+13.2=21.4%となり、ドイツ17.8%やスウェーデン15.9%より高いということになる。

しかしこれこそトリック「まやかし」だ。財政赤字(国債増)は将来世代の負担であって、現在の国民負担ではない。現在の日本国民は、将来世代に負担を回すことによって(自らは低負担で)、中程度の社会保障を享受している(中福祉)ということ。。

*1 財務省「国民負担率の国際比較(GDP比)」
*2 国立社会保障・人口問題研究所「社会支出の国際比較(GDP比)」

ps. こういうグラフがエクセルでも作成できることを発見(試行錯誤の末に^^)。

神隠しによる技術流出

週刊ダイヤモンド11月16日号が、韓国企業サムスンの特集(「二番手商法の限界」)を組んでいる。まず目を引かれたのが「吸い尽くされた日の丸技術、暗黒の技術流出40年史」。

「まるで神隠しのように姿を消した」多くの日本人技術者が、「お土産をどっさり持って」韓国へ渡り、韓国語の通名で、サムスンに貢献しているという。「お土産」とはもちろん当該技術者の知識能力と、それから日本企業の内部機密資料だそうだ。たとえばシャープ亀山工場の場合には、工場建設中の段階で設計図の全部がサムスンの手に渡っていたらしい。つまり、シャープが社運をかけた最新鋭工場の生産機種と生産能力の詳細は、工場稼働前にサムスンに筒抜けだった。製品の原価情報や新機種の企画戦略書など、日本企業のあらゆる情報が把握されているらしい。まぁ、ルール違反には許せないものを感じるけれど、日本企業のセキュリティの甘さ、さらに日本企業が自社の技術者を冷遇し続けてきたという側面もあるのかも。。

特集では、サムスンの戦略を「キャッチアップ殺法」と名付けている。この殺法には「奥義5箇条+1」というものがあるらしく・・・

  1. 合弁会社を日本企業と設立
  2. 技術供与を日本企業から受ける
  3. 「先生」として日本人のトップ人材を招く
  4. 日本人エース技術者をヘッドハント
  5. 部品屋になって日本企業からノウハウ吸収
  6. 学ぶことがなくなったら巨額投資で日本企業を殲滅(って、過激派の内ゲバか^^)

サムスン電子の営業利益の7割をたたきだすスマートフォン(ギャラクシー)はこうした「キャッチアップ殺法」の集大成であるという。

「部品屋に徹する。セット(完成品)は作らない」。約10年前、そうささやきながらサムスンは格安の部品をひっさげて、日本の携帯電話メーカーに近づいてきた。部品としては使い物にならない品質だったが、あまりの安さに、結局、サムスン製部品の採用が決まってしまう。製造現場は「仕方がないので部品の品質を高めるようにサムスンに技術指導した」。その結果、サムスン製部品の技術水準は向上した。それだけならよかったが、最初の約束はどこへやら、サムスンはそこで身につけた技術を詰め込んだギャラクシーを日本市場へ投入。スマホに乗り遅れていた日本企業にとどめを刺した。
たとえば、ギャラクシーのNANDメモリは東芝から技術供与を受けたもの、有機ELディスプレイはNECとの合弁で技術と知的財産を手に入れたもの、など。

サムスンは既に日本の家電メーカの技術を完全に吸い尽くした。次のねらいはカメラ、コンデンサ、化学、LED、バイオ医薬品、電池などなど。サムスンはこうした新しい分野でも「愚直にキャッチアップ殺法を繰り返しており」、現在はイメージセンサでニコンに急接近中とのこと(ニコンはサムスンの下心を見抜いて熱烈営業には応じなかったらしいけれど・・・^^)。

世界最低の教育予算?

「世界で一番少ない日本の高等教育予算」という記事を目にした(こちら)。GDP比で見た高等教育予算(公的支出)は、世界で最も高いデンマークの2.4%、OECD加盟国平均の1.4%に対して、日本は0.8%。これは「世界一少ない高等教育予算」であり、政府は「高等教育への予算をOECDの平均値1.4%まで引き上げる」べきだという。

教育予算が少ない・もっと教育予算を増やせという主張の論拠はいつもコレ(GDP比)なんだけれど、こうした主張は妥当なんだろうかといつも思う。というのも、税収比で見ると日本の教育予算は他国に比して遜色ないのだから。簡単な算数で、

(高等教育予算/税収)=(高等教育予算/GDP)÷(税収/GDP)

GDP比で見た高等教育予算(高等教育予算/GDP)は上のグラフのように、デンマーク2.4%、日本0.8%。しかし(税収/GDP)は、デンマーク48.2%に対して日本は15.9%(こちらなど)。よって、税収比で見た高等教育予算(高等教育予算/税収)は、デンマーク4.98%に対して日本は5.03%となる。

つまり、日本政府は税収のうちデンマークとほぼ同率の予算を高等教育に投じている。日本の高等教育予算がGDP比で他国より少ないのは、日本の税収がGDP比で他国より少ないからだ。これは、国民の選択(の結果)とでも言うべき筋合いのことではないのだろうか?

消費増税が決まった、とりあえず来年度から8%。周知のことだが、我が国の国民負担率、つまり(国民の租税負担+国民の社会保障負担)/国民所得は40%ほど。国民負担率が50%を超えるイギリスやドイツ、フランス等を「中福祉・中負担」の国と呼ぶなら、我が国は「中福祉・低負担」の国と言えるだろう。再来年度に予定されている10%への引き上げが実施されると、消費税率についてだけは、これらの国と同等の中負担国に「昇格」することになる。
でも、私的にかなり驚いたのは、「生活が苦しくなる」という不平不満の声ばかりが報道されていること。10人中10人がこう答えている。中小企業経営者の悲痛な面持ちには共鳴するが、豪勢な身なりをしたご婦人などにはもうすこし粋なコトバを語ってほしいと思う。子供たちの将来のために、若者の負担を和らげるために、この国が破綻しないために、と語る人が一人もいない。いや、実際にはそういう「知識人」も多くいるはずだけれど、テレビはそれを報道しないということだろうか。。

秋学期の「経済情報処理演習II」は、受講者が10名たらずになりそうな気配。前半はUnixコマンドとシェルスクリプト、後半はC言語プログラミング。それぞれに経済ネタの応用問題を準備していて、前半はネット上の株価データ(長期時系列)の分析、後半についてはマクロ経済モデルのシミュレーション。もちろん、いいかげんな内容の講義をしているつもりはまったく無いけれど、まぁ、このシラバスでは不人気にならざるをえないということか。この科目は、非常勤の先生に任せていた頃に受講者1名にまで落ち込んだために、私が交代して担当となり数十名クラスにまで盛り返したんだけど、ここ数年の漸減傾向はいかんともしがたいものがある。隔年開講としてしまってもいいんだけど、その前に、「私の実習科目は何故かくも不人気なのであるか」とでもいったタイトル(の文章/プレゼン)で思いのたけをまとめてみたい気もしないではない^^。

アップルの底力?

スマホは十分に成熟して、サムソンとアップルの競争点は、内蔵カメラの性能あたりに絞られてきた様子。スマホはコンデジの代替品として進化していくのかな。9月20日付け日経新聞の記事(「カメラ会社も仰天、新型5sで見せたアップルの底力」)。有料会員限定なのでリンクをはれないけれど、内容は要するに、サムソンGallaxyの新型が内蔵カメラの画素数を1300万に上げたのに対抗して、アップルiPhone5sは画素数800万のままでセンサーのサイズを大きくした。これには日本のカメラ会社も「まっさお」?でアップルの底力を見せつけた、というもの。日経のこの種の記事にはピントがずれたものが多いけれど、まぁ、面白いと思った。

iPhoneのセンサーはソニー製、サムソンのセンサーは自前だろう。つまり、iPhoneとGallaxyの競争は、ソニー対サムソンのセンサー技術の競争。もともと日本企業から流出した技術だけれど、サムソンはどれくらいまで日本メーカーに迫っているのだろうか。この日記でも何度も引用する DxOMark のスコアを集計しているページを見つけた(サムスンイメージセンサーの追い上げ)。APS-Cサイズのセンサー(普及型デジ一眼、つまり、昔のハーフサイズフィルム)での比較では、ニコン・ペンタックス・ソニーに次いでサムソン、意外にも差がないぢゃないかという感じなんだな、これが・・・^^。

ただ、基本的なことだけど、ちっぽけなセンサーが進化して十分な解像度や感度を持つようになっても、(小型軽量という点以外では)大きなセンサーにはどこまで行っても敵わない。なぜなら、カメラやレンズの基本構造はフィルム時代とまったく変わらないのだから(つまり、センサー=フィルムのサイズ自体がいちばん重要な要素なのです、フォーサーズはどこまで行ってもフォーサーズ、スマホのカメラもどこまで行ってもスマホのカメラでしかない)。数年前だったか、DOFをレタッチで自由に操作できる技術が話題になったけれど、あれはその後どうなったのだろう。実用化すれば、ほんとうのデジカメ革命だと思ったりもしたけれど・・・(陰謀史観は大嫌いだけど、この技術については、危険すぎて抹殺封印されたという話をされても信じるかも^^)。

聖天通りのパラソル

東京五輪の経済効果

くどいが、東京五輪開催の経済効果。150兆円というのはさすがにどのメディアも取り上げなくなったようだが、東京都が発表した3兆円という数字が一人歩きしている。でも、これは生産誘発額であって、付加価値の増額ではない。最終需要の増分は1兆2千億円と試算されているようだから、国内企業の付加価値増はたかだかこれと同額ほどにしかならないだろう(最近の内閣府短期計量モデルの推計では乗数は1.07ほど)。こんなことは自明で、ちょっと調べてみると、上げ潮派?のエコノミストですら2007年にすでに指摘していた(こちら)。経済効果だけを考えるなら、五輪開催のメリットはびみょうなところ。もちろん、それを補ってあまりある大きなメリットが、五輪招致にはあるはず。

仕事が早く終わったので、ちょっと遠出して竹田城跡まで(どこでもよかったんだけど、青春18きっぷの期限が迫っていたので^^)。大阪から姫路経由で竹田まで、新快速と播但線の鈍行を乗り継いで3時間弱(往復5000円のところを2300円^^)。竹田駅から城跡までは(迂回路で)片道1時間の適度なハイキングコース。寒くなると名物の雲海が出て、うっとおしい^^写真家諸氏であふれかえるそうだから、寒くならないうちに行くのがよい。

ps. うっとおしい写真家諸氏は「カメ爺」とも呼ばれるようで、その非常識なふるまいは、たとえばこんな感じ(観光客が荒らす美瑛町)。かつて阪神電車を(不可抗力で)止めてしまった身としては(即座に平身低頭に謝って事なきをえたけれど)、没頭する気持ち自体はわからないでもないんだけれど・・・あとの対応はヒドすぎる^^。まぁ、趣味なら光景を自分の目に焼き付ければ十分で、カメラに記録するのはオマケ。カメラを持っていると見方もずいぶん違ってくるし、カメラを持ってブラブラするだけでも楽しいのにね(筋トレにもなるんだから^^)。。

生活保護、制度の定量分析

昨日、地方財政専門の若い同僚から、生活保護にまつわる二つの用語を教わった。もらう必要のない人が生活保護給付を受けることを「濫給」といい、もらう必要がある人が生活保護を受けられないことを「漏給」というそうだ。いずれもメディア等でよく騒がれてはいるが、実際にこれらがどれくらいの比重なのかは興味あるところ。濫給つまり不正受給は1万6000件(0.35%)に対して、漏給は600万〜800万といった数字をあげる人もあるが、推定の精度はよくわからない。とくに、不正受給率0.35%という数字は、露呈した氷山の一角ではないか。大阪の保護率の高さ、たとえばこちらのサイトの失業率との相関図などを見るにつけ、不正受給率はもう少しは高いのではないかと疑いたくなる。ちなみに、大阪市の公式統計によると保護率が2%を割っているのは福島区と西区だけ、とくに福島区は最小で1.45%(私が生まれ育った頃の福島区のイメージからはちょっと意外だけれど・・・)。

なお、第一人者の研究(こちら※PDF)によると、近年の生活保護率の上昇は不況要因(失業率や有効求人倍率など)だけでは説明できなくなっているようだ。高齢化等の要因も考えられるが、この研究がもっとも着目しているのは給付主体(厚労省や自治体)の政策スタンスの変化、すなわち2009年3月以降の受給基準の大幅緩和だ。この基準緩和がリーマンショックと同時期にはじまっているだけに、この分析は興味深いというもの。一般には(こちらのページの解説のように)2009年からの保護率急増はリーマンショック(失業率の増大)によるものと信じられているけれど、実は、基準緩和という要因が少なからず影響していたということだ。2009年3月といえば麻生内閣の頃だが、よほど注意していないと、こんな細かな制度変更のことはわからない(たとえば麻生内閣(WikiPedia)の記事には出てこない)が、こういうことが実際の地方財政の動きを左右していることにはあらためてちょっと驚く。

実は、先に終わった市民カレッジでも、こんなシーンがあった。日本のデフレは名目賃金の下落が原因、ではなぜ日本でだけ賃金が下落したのかというと、日本では正社員解雇のコストが異常に高く(労働者本人にとってはもちろん、企業にとっても)賃金で調整して雇用は守るというのが日本型モデルだから・・・とかなんとか説明していたら、「雇用調整補助制度が賃金調整を促しているのでは」という質問を受けた。即座に答えられず、少し調べてみたが、この制度の定量的な分析は未だほとんどなされていないらしい。

非伝統的金融政策の効果

本日の市民カレッジは、2000年代からはじまった非伝統的金融政策の効果、とくにアベノミクスについて。

  1. 昨年秋まで(つまり、アベノミクス以前)の量的緩和政策に効果はなかった。ベースマネーが異常に増えたが、マネーストックは増えず、銀行貸出はむしろ減少して、物価は下落した。ソロスチャート(為替レートは日米ベースマネー比の増加関数という命題)もあっけなくくずれた。
  2. ところが、アベノミクスは、同じ手法によって効果を発揮した。期待インフレ率はたしかに上昇しているようだし、昨年秋から円安トレンドが続いている。
  3. もともと円安に転換する素地が醸成されていたという背景もあるが、やはり、コミットメントの強さ(この首相ならとことんやりかねない^^という期待)が功を奏したと見るべきだろうか。
  4. しかし、これから先、名目金利の上昇を一定範囲に抑えてインフレ目標を達成できたとしても、また、賃金が上昇してくるとしても、投資や消費が着実に増えて持続的な経済成長につながるかどうかは不透明。かりに一定の景気回復が見られたとしても、経済成長による税収増で財政難を回避できるとは考えにくい。
物価連動債の利回りから期待インフレ率を推計するくだりをどう説明するか悩んで、金融論のテキストを何冊か見たんだけれど、わかりにくい説明ばかりでちょっと辟易。しかし結局、ラフに言葉で説明して、他のテキストと同様にわかりにくい説明になってしまったようだ^^。まぁ、このあたりは、次の機会への反省点ということで・・・。

講座修了後に、いつも最前列で聞いてくださった女性から達筆の書状(ハガキ)をいただいた(「刺激に感謝」の趣旨、講師冥利に尽きる^^)。

 
アベノミクスの今後は、景気回復/財政破綻/元の木阿弥?

注)通常債の利回りー物価連動債の利回り=期待インフレ率 となることは数学的にはカンタンな話で、連動債の価格をY, 通常債の価格をX
 として,(インフレ率ゼロのときの)収益はともにAで等しいとする。連動債の利回りをRy, 通常債の利回りをRx, 期待インフレ率をpとすると
, 市場の裁定により A/X = A(1+p)/Y つまり (1+Rx) = (1+p)(1+Ry), この両辺の対数をとり線形近似すると Rx = p + Ry となる。

金融政策の効果

今日の市民カレッジのお題は、金融政策の効果について。

  1. 伝統的金融政策、つまり公開市場操作による短期金利(コールレート)の誘導はうまく機能しない。それは、投資が金利の変化に反応しない(投資の利子率弾力性がゼロ)、金利が限界(ゼロ金利)まで下がってしまった(流動性の罠)といった理由によるものだろう。
  2. 同様に、外為市場でのドル買い(為替介入)もうまく機能しなかった。こちらは外為市場が肥大化して、一国の中央銀行が影響を及ぼせるものではなくなってしまったから。
  3. 新しい「非伝統的金融政策」とは、量的緩和を拡充して、同時にインフレ目標+時間軸政策を公約(コミットメント)するもの。前者の量的緩和では政策の中間目標を金利からベースマネーにシフトさせたが、効果はあまり見えていない印象。
  4. 後者のコミットメントについては、インフレ目標の公約で期待インフレ率を高めることにある程度の効果を発揮したのではないだろうか。時間軸政策(ゼロ金利継続の公約)で長期金利の上昇を抑え、期待実質金利を低下させることが、これからの課題となるはず。

時間軸効果を説明するために(苦肉の策で)下のような簡単な数値例を・・・。

 

 

楽しかったこの講座も来週1回を残すのみ。50人あまりの受講者全員が社会人ということもあるけれど、あれだけ熱心に静聴してくださると、やりがいがある。この続編を、機会があればやりたい。というか、来年の英語講義でやろうかな。。

ps. リフレ派と正統派の対立にまつわる笑い話をいくつか紹介したら、けっこうウケた。前日銀総裁はリフレ派の某H巨人の教え子なのに、巨人は近著でその愛弟子の人格までもコキおろしていることや、逆に、インフレ期待を醸成する政策には時間的不整合があるから、前日銀総裁のような賢明な人が「大胆な金融政策」などとブチあげても誰も信じないが、何をやるかわからない非合理の人が宣言したからこそ効果を持ったのだとか、ブチあげたはよかったが肝心のゼロ金利継続宣言をうっかり忘れてしまったので長期金利が急騰したのだとか・・・^^。

Diagrammix

Mac OS 用のフローチャート作成ツールがないかと探してみたところ、Diagrammix(1700円)がGoogle検索のトップに出てきた(かつて愛用した Tgif は、さすがにいまさら使う気にはなれず・・・^^)。とても便利で、下のようなチャートが簡単に作成できる。

アベノミクスにまつわる論点をこんな風にまとめてみた。今週水曜の市民カレッジは金融政策(量的緩和・時間軸政策)の話をして、来週(最終回)にこのネタで締めくくる予定(もうこの調子で最後まで行くことにした^^)。
それにしても、この市民カレッジのおかげで、日本経済について漠然と考えていたことをかなり整理できたと思う。今学期は雑務が重なりメタメタに忙しかったが、休みに入ったら実証分析に本腰を入れてとりくもう。

財政政策の効果

今週の市民カレッジは、アベノミクス第二の矢「財政政策」についての考察。

  1. 財政政策が景気に与えるプラス効果は、古典的な乗数効果のみ。
  2. それに対して、景気へのマイナス効果は、(a)財政赤字の増加が国民に将来の増税を予感させ消費を抑制する(中立命題)、(b)財政赤字の増加により金利があがれば民間投資が抑制される(クラウディング・アウト)、(c)金利が上がれば円高となり経常収支も悪化する(マンデル・フレミング)。
  3. プラスとマイナス、どちらが強いかは微妙なところだが、内閣府の短期計量モデルによる試算では、乗数はたかだか1.07ほどで、失業率の改善効果などもごくごくわずか。
  4. 震災復興や老朽化した社会資本の復旧など、ほんとうに必要な公共投資は行わねばならないが、財政政策は、景気対策としてはほとんど意味がない。国の債務残高GDP比は、すでに太平洋戦争末期のレベルを超えている。むだな公共事業を続ける余裕はとっくにない。
  5. 蛇足ながら、「乗数効果は5.0もある」だとか「日銀が紙幣を刷って国債を償還すれば公債の中立命題は成立しない」などと語る人物を内閣官房参与にすえたのは、致命的なあやまちではないか(ここで笑いをとろうとするも・・・^^)。

マンデル・フレミングモデルをフローチャートで説明。

「2〜3%のマイルドなインフレ下で国債はどうなるか」という質問があった。インフレに連動して名目金利が上がると、国債費が膨張して、国内銀行が保有する国債にも含み損が出る。1%の金利上昇で7兆円の国債費増、国内銀行の自己資本の2割が毀損という試算もある。インフレは良くない、と(とっさに)答えたけれど、そういえば、リフレ派はこの点をどう考えているのだろうか。。

 

ところで、FlickrがYahooに買収されて契約のかたちが変わった。継続するかやめるかを7月中に決めねばならないようだ。Flickrにはすでにアップロードしておらず、Friend だった英国人女性数名とも交流はすでに途絶えていて・・・(いちばん親しかったMikiは大学卒業後にプロのイラストレータ兼フォトグラファーになったようす)。でも、Flickrのアカウントを消すと、他所で勝手に使われている写真のオリジナルを主張できなくなりそう。どうしようかな。。

アベノミクス本

市民カレッジも残り3週、そろそろ参考文献を紹介せねば、ということで、講座終了後に読んでもらえそうな本を探すために、梅田の大書店へ。いろいろと観察した後に、『アベノミクスでも消費税は25%を超える』(小黒一正)と『インフレで私たちの収入は本当に増えるのか』(佐々木融)の二冊がよいときめた。

上の二冊はいずれも正統派の立場から書かれたものなので、リフレ派の本も一冊くらいはあげておこうと探したのだけれど・・・良書を見つけることができなかった。たとえば、「リフレ派きっての論客」という触込みの『解剖アベノミクス』。短時間のうちに書かれたものなのか、文章が淡泊で説得力にとぼしい印象。上の小黒教授の本などと比べると、論理の精緻さや論旨の明快さにおいて、劣るように思う。

それにしても(蛇足ながら)、学生や受講者に「買わせてはならない」と思わせる本が多すぎないだろうか(まさに、この国の混迷を反映?)。。ベストセラーとなった『アメリカは日本経済の復活を知っている』などは、帯のキャッチコピーが胡散臭さ200%(←写真を参照)、これを見ただけで手に取る気も失せてしまった。

財政破綻!?

というわけで、今週の和泉ホール市民カレッジは、いよいよ焦眉の財政破綻問題へ突入なのだ^^。

  1. あらためて指摘するまでもなく、日本の財政は危機的状況にある。「日本政府は借金も多いが資産も多く、純負債で見るとまだ大丈夫」などと言う経済評論家もいるが、ほとんど無意味。
  2. 社会保障費の自然増は不可避。つまり歳出を抑えることはできないのだから、歳入(税収)を増やす以外にない。じっさい、現在の「国債バブル」は、日本の国民負担率の低さに支えられている側面がある(増税による財政健全化がまだ不可能ではないと市場は見ている)。
  3. 長期金利の上昇が財政破綻の引き金を引く可能性は高い。毎年100兆円を超える借換債発行は困難になり、国債費が急騰。また、巨額の国債を保有する国内銀行のバランスシートは毀損して、貸し渋りや国債の大量売却が生じる危険性がある。
  4. 財政の現状に関して楽観的な経済学者はいない。一部の経済評論家は「楽観説」を唱えているが、論旨不明瞭。高齢化率がピークとなる2055年までに達成すべき消費税率は、妥当な試算によると、30%を超える。

この国をいちど破綻させてガラガラポンでやり直したほうがよいという考えも(特に若い世代のなかには)ある。「丸山眞男をひっぱたきたい」を紹介するかどうか、最後まで迷ったけれど、やめておくことにした。

格差社会の虚実

本日の市民カレッジは「格差社会の虚実」というテーマで80分くらい話した。格差社会論の虚実、すなわち「ウソ」と「マコト」、論旨は大略以下のような感じ。

  1. 資産格差は70年代から(トレンドとしては、むしろ)平等化の傾向にある。2000年代前半(小泉政権下)の短期間を取り上げて格差拡大を強調する議論は、より広い視野から再考されるべき(そのような議論の例としてこちらなど、ジニ係数の長期動向は国民生活白書平成17年版等にある)。
  2. 所得格差は、たしかに、70年代後半あたりから徐々に「不平等化」が進んでいるように見える(ジニ係数が漸増している)が、これは高齢化によるものだろう。もともと所得格差の大きい高齢層の人口シェアが増えているのだから、日本社会全体でジニ係数が上がっていくのはあたりまえ。
  3. 我々の社会には「機会の平等」と「結果の平等」を峻別する智恵が必要。「結果の平等」を偏重して、すこし格差が広が(ったようにみえ)ると直ちに「格差社会化が進んでいる」と結論づけて騒ぐのは慎むべき。
  4. ホントに深刻な「格差」は、正社員と非正規社員のあいだの格差、それから「世代間格差」と「世代効果」。将来世代は8000万円の借金を背負って生まれてくる。財政健全化や社会保障制度の抜本的改革は、困難な長期的課題ではあるけれど、避けては通れない。

毎年大学でやっている貧困率の計算例で、笑いがとれた^^。

失われた20年

和泉ホールでの市民講座、あれほど熱心に静聴してくださると、やりがいもあるが、手が抜けない。先週の質問は、「投資立国は可能か」「なぜアベノミクスで円安になったのか」「インフレ目標は達成可能か」「世代間格差の計算はあまりにも(年配者の)実感とかけ離れている」の4つだった(はず)。4番目はなんとしても答えたいが、時間がかかりそうなので、あと回し。前の3つについて、相応の時間をかけて、説明した。

それで、昨日のお題は「失われた20年」。日本経済停滞の原因とおぼしきものは・・・

  1. 将来期待が悲観的で消費や投資が低迷している
  2. 国際競争力の低下により貿易収支が赤字に転落した
  3. 上の1,2による総需要の低迷に加えて、要素価格均等化の圧力により、賃金が低下してデフレが生じている
  4. デフレは円高を誘発し、実質金利を引き上げて、事態をさらに悪化させている(デフレ・スパイラル)
  5. 景気対策で一時的にデフレスパイラルをやわらげることはできるかもしれないが、上の1,2,3の構造的な原因を取り除くことはむずかしい
というような流れ(大学の講義のような難しい話ばかりを続けていてよいのだろうかとちょっと不安になったりもするけれど・・・^^)。

デフレ・スパイラルのところで購買力平価説とフィッシャー方程式を説明したんだけど、いつも大学の講義で使う「カンタン算数表」が好評だった(と思う^^)。

 

動画を直接に埋め込むのはやめた(YouTubeにアップロードして Share -> Embed の安直作戦^^)。

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